「大人の教育はコップの中の水の色を変えることだから難しい。」

これは企業での人材育成の例え話で使われる言葉です。そして、この話には続きがあります。それがこれです。

「子どもの教育は空のコップの中に水を入れるから吸収が良く、結果が出やすい。だから、乾いたスポンジのようにドンドン吸収すると例えられる。」

お~、この例えは分かりやすい!

この例え話、上手いこと表現していますよね。私も約12年前に聞いたときは「お~、この例えは分かりやすい!」と納得しました。「そっか~、だから大人の教育は難しいのか…」と、心底納得したことを記憶しています。とくに、そのときの私は組織人事コンサルティングの仕事をしていて、中でも人の成長をサポートする人材育成分野を中心に活動し始めた頃だったからです。

確かにそうですよね。人が会社で働き始めるまでに、今であれば高卒以上で社会に出るのが多いので、20年近く会社のところで過ごしています。生まれ育った地域だったり、学校であったりと、入社前までは千差万別です。ただ、そこで共通していることがあります。

子どもの可能性は無限大

それが、それまでの過程で「たくさん学び吸収する」ということです。特に、お子さんがいらっしゃる方は分かりやすいと思いますが、「子どもの可能性は無限大」という言葉が所々で言われるように、日々学び日々成長していきます。

例えば、私で言えば、出張で数日間家に帰らなかったうちに、つかまり立ちしてたなんてこともありました。他にも、2日前は歩くのがおぼつかなかったのに、ドンドン歩いていたなんてことも。ストローで飲めなかったのが、いきなり飲めていたりと…挙げればキリがないでしょう。このように、子どもは、乾いたスポンジであり、空のコップなので、どんどん水を吸収したり、水が入っていくものです。

一方、大人は…

一方、大人は…いくら新入社員と言っても、もう大人です。生まれたての赤ちゃんではありません。もう、彼らは乾いたスポンジでもなければ、空のコップでもありません。それまでの過程で、色々学んできましたので、もう水が溢れています。もちろん、それだけだったら良いでしょう。そこで厄介なのが、これです。

「すでに水ではなく、色のついた水になっている」ということです。人間は大人になるほど水がいっぱいになるので、もう吸収の余地がなくなります。しかも、そこに「色」が付きます。その色とは、「思考のクセ」「行動のクセ」など仕事に直結しそうなものから、「地域性」「思想」など、そういったものもです。

だから、正直それぞれが何色か分からない色がついています。少なくとも言えるのは、これから水に色を付けるのではなく、すでに色がついてしまっているということです。ただ、唯一の救いは、例えるならその色が半透明くらいの色ということでしょう。それこそ、これが年齢が上がれば上がるほど、その色は濃いのではないでしょうか。

大人についた色を変えるには…

ということで、この例えで教育を考えると分かりやすいでしょう。結局、大人は色がついてしまっているので、教育によって何かを変えるのは大変だということです。例えば、コーヒーをメロンソーダの色に変えるのは、かなり大変だと思います。いえ、とんでもなく大変でしょう。化学反応式のようなアプローチでもなければ、どにもなりません。それは容易に想像がつくでしょう。

だから「どんな水を入れるか?」が重要

反対に、子どもの教育はどうでしょうか?空のコップです。ですね、水をコップに注ぐだけなので、カンタンです。むしろ、色がついていない分「どんな水を入れるか?」が非常に重要になってきます。湧き水を入れるのか、炭酸水を入れるのか、温泉水を入れるのか、ミネラルウォーターを入れるのか?軟水か?硬水か?水道水か?などなど、その入れた水によって、その後の人生が大きく変わるでしょう。

これまた例え話ですが、料理をするには◯◯水が良いとか、お酒の水割りには◯◯水が良いとか、コーヒーには◯◯水が良いとか、飲料水には◯◯水が良いとか…それぞれの目的によって水の質が変わってきますよね。まさに、それです。だから、人材育成の世界ではこれがタブーとしつつ「理想論」として、裏でこんなことが語られていました。

人材育成の世界でのタブー

「結局、幼児教育から始めないと会社員になってから良い人材に育成しようとしても限界がある」

実際、私も人材育成に関わると、痛感しました。だから、私は一時期「学校を買い上げられるほどお金を持ちたい」と考えていました。お金を持つというと表現が悪いかもしれませんが、目的はあくまでも学校を買うことです。学校を買って、社会人になっても成長する人材を輩出できる学校を作りたいと考えていたのです。

でも、実はこれつい数ヶ月前まで、本当にそう思っていました。だって、「どんな水をいれるか」が勝負なのですから。幼稚園からあるようなところを買えば、今の人材育成の限界を打破できると考えていました。

しかし、、、この考えが実は間違っていることに、ある人との出会いで気がついたのです。実は、それがコンサルタントが絶対に言わない…「人材育成の不都合な真実」だったのです。

ー秋山大介